2021年1月5日、当所の朱潔瓊弁護士と北京箴思知識産権代理有限公司の弁理士李春輝は、深セン理邦精密儀器股份有限公司(以下、「理邦儀器」と略称)を代理して、広州ウォンドフォバイオテクノロジー株式会社(以下、「ウォンド社」と略称)との4件の特許出願権の所有権紛争訴訟すべてで勝訴した。
中国最高人民法院の知的財産裁判所の二審判決は、ウォンド社の上告を棄却し、本件に関係する4件の発明特許の特許出願権は理邦儀器に属するという一審の原判決を支持し、ウォンド社は、判決発効日から20日以内に関連変更手続きを行う必要があると判決した。
本件の特許出願は、理邦儀器ベッドの横の高速試験機器であるi15血液ガス生化学分析装置の中核技術に関するものであり、ウォンド社は、理邦儀器股份有限公司の従業員を採用することで、この中核技術と密接に関連する特許を出願した。
紛争の焦点は、本件の発明が理邦儀器の元従業員の職務発明であるかどうか、出願権が理邦儀器に帰属するべきかどうか、という点である。
ウォンド社とその代理人は、次のように考える。本件の発明者は、理邦儀器の元従業員であるが、ウォンド社も多くの物的・技術的資源を投資していたため、関連発明は少なくとも理邦儀器とウォンド社が共有すべきである。従業員が退職後1年以内になされた同じ技術分野又は隣接する技術分野内におけるすべての発明が元の会社に属すると盲目的に考えると、実際の発明者の科学研究に対する熱意に深刻な打撃を与え、この目的のために物的及び技術的資源を投資した新会社にも明らかに不公平である。したがって、新会社による独自の研究開発とその研究開発貢献の可能性を直接否定してはいけない。
理邦儀器とその代理人は、次のように考える。専利法第6条及び実施規則第12条の意味と立法精神に従って、本件の発明は理邦儀器が独占的に所有すべきである。職務発明の所有権の判断は、新会社が物的及び技術的条件に投資したかどうかとは関係なく、主に以下の2つの点によって決められる。1つは時間基準(従業員が元の会社から退職後1年以内)であり、もう1つは関連性基準であり、つまり、発明の内容が元の会社での従業員自身の仕事又は割り当てられた業務に関連するかどうかである。関連性が判断できる場合、発明者が退職後に新会社で新たな研究開発活動を行ったかどうかを問う必要はない。
「関連性基準」の原理は次のとおりである。退職した従業員と新会社が元の会社の研究開発成果を意図的に占有しようとすれば、元の会社のアイデアを頭の中に入れておき、新会社で全く異なるチームを構成して異なる研究開発プロセスを再現して、異なる発明者が署名すればよく、これにより専利法及びその細則が架空されてないものと同じになり、これは、元の会社の合法的な権利と利益を保護するのに不利であり、さらに、研究開発費の投資、人材育成に懸念があり、技術の進歩を妨げる。
最終的に、中国最高人民法院の知的財産裁判所は理邦儀器を支持した。
最高裁判所は、次のように考えた。理邦儀器から退職してウォンド社に入社した2人の従業員は、本件の発明の実質的特徴に創造的な貢献をしており、本件の発明の発明者であり、専利法実施細則第12条第1項の規定に応じて、本件の発明は、本件に関わる従業員が退職後1年以内になされたものであり、且つこの2人が理邦儀器で務めた職務に関連するものであり、これは、本件の発明が職務発明であると確認する状況と一致する。したがって、本件の発明は、本件に関わる従業員が理邦儀器で行った職務発明であり、特許出願権は理邦儀器に帰属するべきであり、発明出願権をウォンド社が所有するか、又は理邦儀器と共有するべきであるというウォンド社の控訴は、法的根拠がなく、支持できない。
訴訟過程において、中国最高人民法院の知的財産裁判所はプロフェッショナリズムと裁判技術を見せた。裁判所は、両当事者が提出した証拠に加え、裁判中に、理邦儀器から退職した従業員が入社する前にウォンド社が関連研究を実施したかどうかの調査にも重点を置き、調査結果も否定的であったため、ウォンド社が申請した特許技術の出所をより確証した。裁判所は両当事者に、法律専門家の意見を提出する機会を含め、意見を十分に表明するチャンスを提供し、両当事者の反対尋問の意見や専門家の法的意見を公平に考慮した。
本件における中国最高人民法院の立場は、研究開発を重視し且つ誠実に経営するベンチャー企業が研究開発を実施し、コア技術資産を保護する確信をさらに確固たるものにするでしょう!